私鉄駅名研究の歴史

 さて、今回出版された『日本鉄道旅行地図帳』ですが、廃線も含めた鉄道が地図に正縮尺でプロットされていて、それに連動する形で履歴のわかる駅名一覧が掲載されていることが、これまでになかった本であり画期的な企画だと思います。「東海」から「九州」までの編集に加わりましたが、特に私鉄、とりわけ軌道関連には苦労させられました。ですから、私鉄の駅名変遷に絞ってお話したいと思います。

 国鉄・JRにつきましては、『停車場変遷大事典』(1998年)がJTBパブリッシングから発行されていますので、鉄道創業以来の駅名の変遷を比較的容易に辿ることができます。しかし、私鉄にはこのような一冊で総覧できる書物は見当たりません。そこで、私鉄で参考になりそうな資料は、小学館より1992年から発行された『JR・私鉄全線 各駅停車』シリーズとなります。このシリーズでは、多くの方が分担執筆されており駅名変遷のデータの典拠が分かりませんが、各事業者の社史や、過去の『鉄道ピクトリアル』の「私鉄車両めぐり」を主に参考にしていると推察できます。
 その後、私鉄の全線全駅のデータを収録した書籍が各種何度か発行されていますが、小学館のシリーズや「私鉄車両めぐり」からの孫引きが多いのが自然とわかります。
 ところが、この元となったと思われる小学館のシリーズや「私鉄車両めぐり」や類書には、その後に判明した事実とは異なる部分が幾分見られます。そのため、年月日などのデータについて、可能な限り公文書等の一次資料から裏を取る必要があると考えました。

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