NEWS RELEASE:全般      3
No.5495 【勁草書房】鉄道少年たちの時代-想像力の社会史 著:辻 泉
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2018-08-10 18:55:14
    鉄道少年たちの時代 想像力の社会史

なぜ「僕ら」は鉄道が好きなのか?

広がりゆく少年たちの想像力、変わりゆく日本社会を追う。本邦初の社会学的研究。
宮台真司 絶賛!!

電車に乗ると決まって運転席のうしろにかぶりつくようにして前方を眺める少年たちがいた。あるいは靴を脱いで長椅子に座り、窓の外をじっと眺める少年たちがいた。いったい彼らはそんなに熱心に、何を眺め、そして何を想っていたのだろうか。……本書では、鉄道とそれに対する少年たちの想いの歴史的変遷を、かなり長いスパンに渡って通史的に記述していく。いわば時代ごとの鉄道が持つイメージと、少年たちの文化の歴史的変遷をパラレルに記述していくことが本書の主たる目的である。〈はじめに〉より


タイトル: 鉄道少年たちの時代 想像力の社会史
発 行 日: 2018年7月20日 第1版第1刷発行
著  者: 辻 泉
発 行 者: 井村寿人
発 行 所: 株式会社勁草書房
      http://www.keisoshobo.co.jp
図書符号: ISBN978-4-326-60306-0 JASRAC1802286-801
定  価: 本体4,200円+税


【著者略歴】
 1976年生まれ。東京都立大学(現首都大学東京)大学院社会科学研究科博士課程単位取得満期退学。博士(社会学)。
 現 在 中央大学文学部教授
 主 著 「ケータイの2000年代−成熟するモバイル社会」
      (東京大学出版会2014年,共編著)
      Fandam Unbound: Otaku Culture in a Connected World
      (Yale University Press,2012,共編著)

おわりに より …鉄道フォーラムの話もでてきます。

 本書が記述しようとしてきたことがらについて、改めてわかりやすい表現で記すならば、なぜこの日本社会において、鉄道に関心を寄せる少年たちが大勢いるのか、なぜ他でもない鉄道に、ファンたちはあれほど夢中になるのか、といった疑問に答えようとしてきたのだといっても差し支えない。
 だが、なぜそのような問題設定をしなかったのか、ということについては大きな理由がある。というのも、冒頭でも記したように、少年たちが鉄道に関心を寄せてきたことは、少年期の心理的特性であったり、何がしかの情報メディアの影響であったりというような、「単純」な要因だけに還元して説明できることがらではなかったからである。このような問題設定では、そうした説明に還元しかねない恐れがあった。
 本書からも明らかになったように、それはむしろもっと「根の深いもの」として、社会学的に理解すべきことがらであった。いわば少年たちが鉄道に関心を寄せるのは、好き好んで行う、意図的な選択の結果というわけではなかった。むしろ、ある特定のコミュニケーションやアイデンティティのありようの歴史的な変遷、すなわち文化の変遷を長いスパンで記述する中で、ようやく社会学的に理解可能になるものであった。
[中略]
 また鉄道趣味活動を生業とするという点については、本書の第5章でそのライフヒストリーを詳細に紹介したように、日本を代表する鉄道ファンサイトである、鉄道フォーラムのマネジャー伊藤博康さんのお話がとても興味深かった。伊藤さんもまた犬山という地方都市にご在住だが、大都市への距離とは関係なく業務を円滑にできるのは、まさに情報化時代の特徴といえよう。一九九五(平成七)年の阪神淡路大震災をきっかけに、鉄道フォーラムが一気に注目を集めた経緯や、幼少期に当たる高度経済成長期に、いかに鉄道に「夢」を感じていたかを熱心に語ってくださったのが印象的だった。さらにその後、鉄道フォーラム上では、筆者と当時の同僚(松山大学経営学部准教授)だった苅谷寿夫さんとで、全会員向けのウェブアンケート調査も実施させていただいた。その結果は『鉄道ピクトリアル』誌の二〇一一年一一月号と一二月号に、「分析・鉄道趣味」と題する記事にまとめさせていただいた。伊藤さんご自身も含めて、本書でいうところの「電車の時代」の鉄道ファンの方々の傾向がよく表れた分析結果となっており、よろしければ、本書とあわせてご参照いただきたい。また同記事の掲載に当たってお世話になった、今津直久編集長にもお礼申し上げたい。


目 次

はじめに

序 章 鉄道と日本社会……………………………………………………1
 序‐1 本書の目的 1
 序‐2 研究対象 4
 序‐3 アプローチの方法 12
 序‐4 本書の構成 14

第T部 鉄道と〈少年文化〉への/からのアプローチ
 第1章 鉄道と〈少年文化〉…………………………………………21
  1‐1 メディアとしての鉄道 21
  1‐2 日本社会の近代化と〈少年文化〉 38

 第2章 鉄道雑誌とファンたちへの/からのアプローチ…………59
  2‐1 分析対象@−鉄道雑誌とは何か 63
  2‐2 分析対象A−鉄道ファンとは誰か 69
  2‐3 分析方法@−主要鉄道雑誌の内容分析 80
  2‐4 分析方法A−鉄道ファンヘの聞き取り調査 82

 第3章 四段階にわたる「鉄道」の時代……………………………89
  3‐1 主要鉄道雑誌の内容分析の結果 89
  3‐2 鉄道ファンヘの聞き取り調査結果の概要 103
  3‐3 時代区分に関する「見取り図」 122

第U部 鉄道少年たちの時代
 第4章「汽車」の時代−大日本帝国と少年たちの「空想」……133
  4‐1 鉄道の「第一次黄金時代」まで 137
  4‐2 「汽車」の時代の〈少年文化〉 165
  4‐3 「汽車」の時代の鉄道ファンのライフヒストリーから 170
  4‐4 「汽車」の時代とは何だったのか 179

 第5章 「電車」の時代−戦後日本と少年たちの「夢想」……190
  5‐1 鉄道の「第二次黄金時代」まで 192
  5‐2 「電車」の時代の〈少年文化〉 214
  5‐3 「電車」の時代の鉄道ファンのライフヒストリーから 216
  5‐4 「電車」の時代とは何だったのか 222

 第6章 ポスト「電車」の時代
     −高度情報消費社会と少年たちの「幻想」……………227
  6‐1 大転換期を迎えた鉄道 230
  6‐2 ポスト「電車」の時代の〈少年文化〉 254
  6‐3 ポスト「電車」の時代の鉄道ファンのライフヒストリーから 257
  6‐4 ポスト「電車」の時代とは何だったのか 262

 第7章 ポスト「鉄道」の時代‐現在の少年たちの「妄想」…267
  7‐1 鉄道はどこへ向かうのか 270
  7‐2 ポスト「鉄道」の時代の〈少年文化〉 284
  7‐3 ポスト「鉄道」の時代の鉄道ファンのライフヒストリーから 292
  7‐4 ポスト「鉄道」の時代とは何か 296

終 章 鉄道と少年たちのゆくえ……………………………………305
 終‐1 本書のまとめ 305
 終‐2 今後の課題 316

おわりに…………………………………………………………………321

巻末資料

参考文献

索引
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