NEWS RELEASE:JR&私鉄    5
No.1996 【JR海】中央新幹線品川・名古屋間の総工事費は11.0兆円と約4兆円増
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2025-10-30 03:01:59
                              2025年10月29日
各 位
                会社名  東海旅客鉄道株式会社
                代表者名 代表取締役社長  丹 羽 俊 介
               (コード番号 9022 東証プライム、名証プレミア)
                問合せ先 広報部長     池 田 朋 史
                (TEL.050-3772-3910)

      中央新幹線品川・名古屋間の総工事費に関するお知らせ

 中央新幹線品川・名古屋間については、2014年10月に土木構造物を中心とした工事実施計画(その1)の認可を受けて以降、沿線各地で工事を進めています。
 品川・名古屋間の総工事費については、工事実施計画(その1)及び2018年3月に認可を受けた電気設備等を含む工事実施計画(その2)の段階において5.52兆円と見込んでいましたが、2021年4月にその時点で合理的と考えられる要素を盛り込んで精査を行い、難工事への対応、地震対策の充実、発生土活用先の確保等に伴い7.04兆円に増加する見通しであることを公表し、2023年12月に、総工事費を7.04兆円とした、駅・車両基地の建築工事や設備工事、車両等の工事実施計画(その3)及び変更の認可を受けました。
 その後さらに工事を進める中で、近年の物価等高騰や難工事への対応等に関する増額要素が判明したことから、品川・名古屋間全体の工事費の見通しについて改めて合理的と考えられる要素を盛り込み精査したところ、総工事費が「中央新幹線品川・名古屋間の工事実施計画(その3)及び変更の認可申請について」(2023年12月14日)でお知らせした金額を上回る見通しとなったので、お知らせ致します。

1.総工事費(品川・名古屋間)の見通し
 11.0兆円

 ※工事実施計画(その3)及び変更の工事予算(7.04兆円)に比べ約4兆円増。
 ※車両費含む。山梨リニア実験線既設分を除く。

2.工事費増の理由
・物価等高騰の影響、難工事への対応、仕様の深度化
・主な増加理由は、別紙「工事費の主な増加理由」をご参照ください。

3.工事資金の確保と健全経営の確認
・今後の経営に関して、今までと同様に健全経営と安定配当を堅持することを優先し、工事費に充てる資金は営業キャッシュフローを主体に、不足分については資金調達によって賄ってまいります。仮に健全経営と安定配当を堅持できないと想定される場合には、工事のペースを調整し、十分に経営体力を回復すること等で、工事の完遂を目指します。
・参考として、工事の完遂に必要な資金の確保と健全経営の確認を行うため、品川・名古屋間の開業時期を便宜上2035年と仮置きし、一定の前提をおいて営業キャッシュフローを算出したところ、毎年の営業キャッシュフローに加えて資金調達を約2.4兆円行えば、品川・名古屋間の建設に必要な資金を賄え、健全経営と安定配当を堅持できることを確認しました。
・中央新幹線の建設・運営・保守の一層のコストダウンに取り組むとともに、建設に必要なキャッシュフローを継続的に確保するため、引き続き既存事業において「業務改革」及び「収益の拡大」を推進しつつ、今後インフレの影響を強く受ける場合には、鉄道の運賃・料金への価格転嫁が必要になると考えています。そのような観点から、インフレによるコスト増を柔軟・簡便に運賃等に反映できるような仕組みづくりに向けて関係箇所へ働きかけています。
・当社としては、健全経営と安定配当を堅持しつつ、今後とも、中央新幹線の早期実現を目指して、計画を推進してまいります。

(参考:確認の前提条件等)
■開業時期(仮置き)
 2035年

 ※開業時期の見通しを示したものではなく、試算のために便宜上仮置きしたものです。開業時期については、静岡工区のトンネル掘削工事に未だ着手の見込みが立たないため、現時点で見通すことができない状況です。見通しが立った段階で、改めてお知らせします。

■運輸収入(既存鉄道)
 2025年度  :1兆5,300億円(2025年10月29日公表の業績予想の通り)
 2026年度以降:1兆4,900億円(2025年度業績予想から大阪・関西万博による収入増の影響を控除)

■費用(既存鉄道)
 人件費は、現行の鉄道従事員の規模の維持を基本とし、物件費は、2025年度業績予想並みを計上。また、「業務改革」により進めるコスト削減を考慮して計上

■設備投資(中央新幹線)
 11.0兆円

■設備投資(既存鉄道)
 必要な設備投資の積み上げを基本とし、「業務改革」によるコストダウンを考慮して計上

■その他
 資金調達は社債及び借入とし、その際の金利は3%とする

(参考:確認の結果)
 ┌─────────────┬─────────┐
 │名古屋開業翌年度の営業収益│1兆6,400億円(※)│
 ├─────────────┼─────────┤
 │   同、経常利益    │   650億円(※)│
 ├─────────────┼─────────┤
 │   同、長期債務残高  │   7.1兆円   │
 └─────────────┴─────────┘

(参考:経常利益・長期債務の推移)
○2035年開業(仮置き)とした場合
 *伊藤注:添付画像をご覧下さい。

※ 営業収益及び経常利益の算出と、中央新幹線の価格設定の補足については、以下の通りです。

・営業収益については、中央新幹線の品川・名古屋間の価格を交通政策審議会(2010年)における試算と同様、東海道新幹線「のぞみ」指定席の価格に700円を上乗せしたものとし、航空及び東海道新幹線から中央新幹線へのお客様の転移数を想定し、開業による増収額を算出しました。名古屋開業翌年度の開業による増収額は約700億円と見積もっています。
・本試算の価格設定は、試算のために便宜上仮置きしたものです。中央新幹線の価格については、その圧倒的な速達性とサービスに見合った価格設定とすることを基本とし、具体的な運賃・料金体系については、開業が近づいた時点で決定し、必要な手続きを行います。
・費用については、中央新幹線に関する資産の減価償却費と維持運営費等を計上して算出しています。
・上記前提のもと、名古屋開業翌年度の営業キャッシュフローは概算で約6,000億円と想定しています。
・なお、輸送人員に変動がないと前提を置き試算すると、中央新幹線の品川・名古屋間の価格を1,000円上げるごとに約300億円/年の増収効果があると見込んでいます。

4.その他
・本件については、本日開催の取締役会にて決議しております。
・本件による、2026年3月期業績予想(2025年10月29日公表)への影響はありません。


別紙
            工事費の主な増加理由

(1) 物価等高騰の影響(+2.3兆円)
・ 2021年以降、鋼材やコンクリートなどの建設資材価格や各種設備を構成する銅やアルミなどの材料価格、建設発生土の受入に係る費用等のほか、労務費等が高騰している状況を踏まえ、工事費を見直しました。  [+1.3兆円]
・ 今後、物価等の高騰などにより、工事費が更に上昇するリスクに備えた額を計上しました。  [+1.0兆円]

(2) 難工事への対応(+1.2兆円)
・ 山岳トンネルでは、事前に実施した地表踏査や弾性波探査等の調査結果を踏まえて当初の掘削計画を立てましたが、これまで掘削した区間では当初の想定よりも脆い地山が出現しており、安全に施工し強固な構造物を作るための対策を追加しました。また、この対策によりトンネルの掘削断面積が大きくなることに伴い建設発生土量が増え、処理費が増加しました。今後の掘削区間においても同様の対応が必要となることを見込み、工事費を見直しました。
 *伊藤注:添付画像も参照ください。
・ 高架橋・橋りょうにおいて、用地の取得後に可能となった追加調査の結果を踏まえ、基礎形式の変更や斜面対策等を追加で実施する必要が生じ、今後発注する工事を含めて工事費を見直しました。
・ 名古屋駅において、追加調査の結果を踏まえ、地下をより安全に掘削するために、鉄道施設や電気洞道などの近接するインフラ構造物への影響を低減するため、軟弱な地盤に対する変位抑制対策を強化することとしたほか、掘削時の盤ぶくれ対応について、地盤を押し上げる水圧への対策を強化しました。
・ 品川駅において、地下掘削時に東海道新幹線駅や品川ビルを支えるための構造について具体的な施工計画を踏まえた詳細な解析結果を踏まえ、地震への更なる備えとして構造を見直したほか、駅函体についても強化しました。

(3) 仕様の深度化(+0.4兆円)
・ シールドトンネルにおいて、リニア特有の軌道(ガイドウェイ側壁)を支える構造(下部構造)について、高架橋・橋りょうの地震時の設計で得られた知見を踏まえて設計を見直した結果、コンクリートや鉄筋等の数量が増加しました。
・ 機械設備や電気設備において、営業線での列車走行を模擬した詳細な解析等により得られた知見を踏まえて検討を深度化した結果、各設備の仕様を見直しました。
 *伊藤注:添付画像も参照ください。
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