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No.6914 (Re:6902) 【両備グループ】岡山市の法定協議会がなぜ上手くいかないか?
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2021-02-13 22:08:25
       岡山市の法定協議会がなぜ上手くいかないか?

両備グループ
代表兼CEO 小嶋光信

「少子高齢化の地方では競争と路線維持は両立しない」という認識のもとで岡山市でも2018年に市内中心部では初めての法定協議会が開かれた。
地域の公共交通の改革は「待ったなし」ということで幹事会と協議会が開かれ、スピーディに、また戦略的な岡山市交通網形成計画が作られた。

協議会の紛糾と空転の経緯

ところが一転、具体的な再編実施計画の議論に入ると、長年地域の公共交通を守ってきた8社のほとんどが異議を唱えて協議会は空転し、抗議の嵐になった。
困った岡山市は、バス事業者による分科会を設置して協議会にかけようとしたが、岡山市が幹事会を開かないということで再び空転の後、昨年12月に分科会は開かれたが、ここで市は再編実施計画を「中断」する方針を固める。そして、今年1月21日に幹事会、2月1日の法定協議会で再編議論が正式に中断となる前に、岡山市はバス協会やJRの承諾を得ずに、岡山駅構内乗り入れが可能と思われる書類をつけてH社が1月初めに申請して中国運輸局は受理した。幹事会での議論も無視され、このコロナ禍のドサクサに紛れたとも思われる一連の流れだ。
岡山駅構内乗り入れの件を岡山運輸支局からの連絡で知ったバス協会並びに関係事業者がこの岡山市の行為は理不尽として幹事会は紛糾。幹事会の委員長も岡山市に、H社の岡山駅構内乗り入れを協議会にかけるべく指導したが受け入れられず、事業者が抗議文を岡山市に提出。協議会は予定通り開かれたが、やはり議題には上がらず、再び紛糾した。

紛糾と空転の原因
一連の経緯改善について、正すべき3つのポイントがあると考える。

1. ルールに基づいた法定協議会の運営をしなかった。
 あ)交通網計画は概ね協議会1回ごとに幹事会2回と規約通りの実施で合計6回だが、再編実施計画では協議会は1年2ヶ月で2回開かれたが幹事会は0回だった。
 い)幹事会軽視ではないかと指摘されると、幹事会を飛ばして事業者のみの分科会を新設。この新設も幹事会や協議会での規約の改正もなく規約軽視といえる。
 この流れを背景に、市は分科会で「中断」したと都合よく捉え、H社の意見だけを優先した申請に市の意見書をつけて1月初めに提出したという。では、法定協議会の再編議論の「中断」はいつ、だれが、どこで決めたのか?だが、正式に法定協議会に提出されたのは2月1日で、「中断」となる1ヶ月も前に協議会の掟破りの申請は出されていた。中断は協議会で決めねばオーソライズされないはずであり、岡山市が中断したからH社は申請したというが、1ヶ月間もの差があり、全くのフライングだ。

2. 交通事業者とのインターフェースが取られなかった。
 再編実施計画に交通事業者の経験と知恵を活用し、交通事業者の意見を聞けば、解決への道筋は明るくなるのである。しかし、再編実施計画を交通事業者の意見を聞かず作成した市は、不備を指摘されても直さず強行しようとしたために炎上した。岡山市の役割は市民に対する公共交通の理念と戦略を整えることであり、個別の路線網再編計画は得手としている交通事業者に任せればすぐに解決する問題といえる。

3.取り戻すべきは「公平性」
 岡山市はH社に道路占有許可を14回も出し続けたが、そのうち12件は休廃止されて、合計で79本許可しても、うち何と51本はバス停の標識を外して放置されている。この度の岡山駅構内の乗り入れの件も岡山市が意見書らしきものを渡し、バス協会やJRの承諾を受けずに申請したことに交通事業者が怒りの抗議をするも、岡山市は法律通りだと法律を盾に事業者の意見を無視した。  
 このH社は、コロナ禍で非常事態宣言が出た昨年4月には早々と国の「不可欠な業務」という方針を無視して、岡山市の特認を得て益野線の9割程度も減便し、更に車両16両中10両のプレートを切り、現在も乗務員を解雇した状態にある。
 にもかかわらず、岡山市は益野線廃止の見返りに中鉄と岡電の国立病院線と市内循環線という新たな「いいとこ取り」を提案して、「いいとこ取り」を抗議されると一転、市は協議の「中断」を言い出し、その見返りにH社は市から廃止を勧告された「益野線」の岡山駅構内乗り入れを申請した。岡山市は自ら廃止を勧告した路線の新たな駅乗り入れができるような意見書らしきものを手渡してH社は中国運輸局へ申請したという異常さだ。岡山市は100年近く地域の交通を守ってきた事業者を敵に回してまで、特定業者をここまで擁護するのは何故か?
 地方の公共交通存続の危機に瀕し、「競争から協調」の時代に変わっているにもかかわらず、秩序抜きで法律を盾に競争を煽る始末だ。
 このような前例を作れば、競争はやり放題で地方での市民の足は守れないと感じている。

【私が考える解決方法】

人の目に指を突っ込むような路線進出は地方では厳禁だ。
H社はこのような協議会の掟破りのような申請を取り下げて協議会メンバーとしてルールに則って協議して進めるべきであり、衰退の一途を辿る公共交通事業を担うものとしての使命を理解してほしい。
混乱を収めるには、岡山市が他社の路線に「いいとこ取り」で参入することを許さず、例えば、他社競合路線でない市民が求める空白地帯のコミュニティバス路線を岡山市が同社に依頼する等の工夫をしてはどうか。すると、H社のバスは中型のコミュニティバス用で、多客時の幹線では積み残しなどが出るため不向きという点も解決できる。一例を挙げると、市内中心部に近い北長瀬駅から大元駅間の交通網空白地帯に、岡山市のコミバスとしてH社に補助を出して実施させることも可能だろう。こうすれば交通網計画(現・地域公共交通計画)にかない、空白地帯の解決で市民の皆さんも喜び、赤字で休廃止を繰り返した同社も黒字化の目処と、任される交通圏ができて「三方よし」となるのではないか。