駅データ公開に際しての「まえがき」
■益田彰久(ますだあきひさ)からのメッセージ
鉄道の路線や駅の廃止・開業といった動きに興味があったことから、これらを扱ったデータベースが欲しい、と学生の頃から考えていました。
当初は『鉄道百年略史』(鉄道図書刊行会)などを参考にカードへの手書きを始めたこともありましたが、すぐにカード管理での限界を悟り、情報量にも不足を感じました。
それからは雑誌や書籍などの情報収集に熱が入り、データ整理はパソコンが庶民に普及し始めた頃だったのですぐに電子化、並行して自分の要求を満足するにはどのようなデ-タベースが良いかをずっと試行錯誤していました。
そのような経緯なので、私の活動は「調査」というよりも「情報をどうまとめて見せるか」に重点が置かれています。
つまり多数の方々が苦労して調査しまとめあげた成果がベースとなっており、資料参照の際などいつも感謝の念を抱きながら有難く参考とさせていただいております。
ただ仕方のないことですが、各資料の情報の量・質・濃度・精度はそれこそ千差万別バラバラです。公式資料にさえも間違いが見えてきます。
私のデータベース化はそれらをある一定の基準で平準化して見せられるものにならないか、と考えるようになってきました。
このような趣味活動の中で石野哲さんと連絡を交わす機会に恵まれ、データベースを石野さんにご覧いただき様々なご指摘を受け誤りを修正をすることで、ようやく人様に見せられるようなものになってきました。
とは言えまだやらねばならない作業や情報反映は相当量あり、データのバグも嫌気がさすほどあります。自分が生きている間に完成するのかと、いつも不安に思っています。
自分の閲覧に便利なようにと、細々とホームページも創ってありますが、一般の方にはとても見易いものではありません。
それでも今回、形を『停車場一覧』としてあえて発表させていただくのは、これをきっかけにこの分野に興味を持つ方が増えたり、真相が深まることに繫がればと、石野さんの後押しもあり決心した次第です。
簡単に紹介すると、鉄道の路線や停車場の基本的な情報元『地方鉄道軌道一覧→私鉄要覧→民鉄要覧→鉄道要覧』、『停車場一覧』、『官報(鉄道公報を転載)』と、書籍や雑誌等に発表された研究成果や資料を補強・検証資料として参照し、会社名・路線名・駅名・駅間距離などどれかひとつでも変わったら、自~至(from~to)で有効期間(適用期間)を設定していくことで構築したものです。
これが完成すると、任意の時点の年月日を指定するだけで、その日時点の路線名・駅名・駅間距離の行が選択され、その任意日の「停車場一覧」や「各社・路線別の、距離・停車場数算出」ができあがります。
*『鉄道要覧』=事業者別に免特許線・開業線の距離・区間・免特許日・開業日等
*『停車場一覧』=事業者路線別に駅名・読み・隣接駅間距離・所在地・営業開始日等
*『官報』=創刊号(1883(明治16).07.02(月))から、1952(昭和27).04.30までの官報が、国立国会図書館のHPで無料公開されている(問い合せたところこれ以降の無料公開は無いとのこと)。「鉄道公報」の「告示(こくじ)」「公示(こうじ)」を転載しているので、Webで原文が確認できる
なおデータベースへの入力済のものに限られますが『廃線地図』も準備してあります。廃路線のイメージを掴む助けになり、紙の地図と異なり拡大等できるのはとても便利ですが、反面かなりの部分で完全ではありません。参考程度とご理解ください。
■石野 哲(いしのてつ)からのメッセージ
1998年、『停車場変遷大事典 国鉄・JR編(1998(平成10)年7月31日現在)』(JTB)の発刊時に、次は『私鉄編』と意気込みましたが、まとまった資料が乏しく、現在駅名をまとめたものを何回か公表したにとどまり、2019年3月末、70歳でJTBパブリッシングを退職しました。
*『日本の鉄道全駅駅名総覧9820』=2002(平成14)年7月1日現在=JTB 「旅」2002年8月号別冊付録
*『全国駅名あいうえお順一覧2019<オンデマンド書籍版>』=2019(平成31)年3月31日現在=JTBパブリッシング 2019年4月1日発行
2020/01/06、益田さんより謹賀新年のメールがあり、『一言でいえば「停車場一覧」と「鉄道要覧」を融合したデータベース、しかも任意の日付に対応できるもの』を作成しているとのことでした。それから、益田さんの「鉄道変遷データベース」(小生は「益田さん駅データ」と読んでいます)を時々提供してもらい、『桐』データに変換して、いろいろチェックし協力するようになりました。
ことしの正月、昭和24年6月1日の、日本国有鉄道発足以降のデータは一応入力が終ったというので、試しに「1987年4月1日」を指定してデータを切り出し、「私鉄停車場一覧」の形に加工したPDFを作成し益田さんに送ったのが、2025.02.08(土)。そうすると、「やはり形になると感動がありますね。」とのお返事。
その後のメールのやりとりで、これを「官報」のようにWeb上に公開すれば、私鉄史研究者、特に若い方々の参考にならないだろうか、その公開場所としては「鉄道フォーラム」が最適ではないだろうか、との結論に至りました。
2025.04.01(火)になって、まだ完璧ではないものの、まあまあデータが綺麗になったので、ささやかながら、「1949(昭和24).06.01」「1968(昭和43).12.01」「1975(昭和50).03.10」「1987(昭和62).03.31」「1987(昭和62).04.01」「2000(平成12).01.01」の6つの時点の「私鉄国鉄 停車場一覧」の公開から始めることに決め、伊藤博康さんにこの「私鉄国鉄 停車場一覧」を見ていただき、幸いにも「鉄道フォーラム」において、一般に公開できることとなりました。
*今後の公開を予定している、13時点の「私鉄国鉄 停車場一覧」(1949(昭和24)年6月1日~2013(平成25)年4月1日の期間)のリストは
こちら
この「私鉄・国鉄 停車場一覧」は、
*北から南(東から西)に順番よく並べ、路線と駅を見付けやすくしたこと
*路線ごとの正駅の数を、「駅通番」という形で明示したこと
*右側末尾に、1からの「通番」を振ったので、各停車場一覧の日付と、この「通番」のみで、駅名を特定できること
*和久田本との参照を容易にするため、「和久田番」を掲載したこと
○和久田本=和久田康雄(2017.04.13ご逝去83歳)著『鉄道ファンのための私鉄史研究資料-1882to2012-』電気車研究会 2014年4月25日第1刷発行
○和久田番=和久田本の「各事業者の整理番号」4桁に、同一番号の複数社名の登場順に、1からの追番を付加した5桁番号
(例) 46541 帝釈人車鉄道<軌道>
46542 帝釈人車軌道<軌道>
46543 京成電気軌道<軌道>
46211 京成電気軌道<鉄道>
46212 京成電鉄<鉄道>
が4大工夫です。
さらに、この「和久田番」の一覧と、停車場一覧の「県・郡・市」の元となっている1968(昭和43).12.01~現在までの「JISコード変遷データ」についても、ちかぢか公開する予定です。
私鉄の会社・路線の変遷については、和久田康雄さんの大変な労作(上記書籍)がありますが、同書では、駅の変遷については「路線一覧」の駅名の、旧新駅名の併記にとどまり、その駅名の改称日記載はありません。
今回の「益田さん駅データ」の公開により、全国の私鉄駅の駅名変遷が、連続した形で明らかとなります。
これを公開することで、より正しい「駅データ」に進化することを、大いに期待するものです。
ところで、現状の路線・駅の一覧(正確には停車場一覧)の決定版としては、星野真太郎著『全国駅名事典=2016(平成28)年10月1日現在=』が、2016年12月20日、創元社より発行されています。
星野さんからの最近のメールによれば、「改訂版を鋭意作業中。可能な限り一次資料に当たり、その典拠の掲載頁まで示す編集方針。校正作業量が膨大で、今年(2025年)中に刊行できるかは不透明」とのことです。
この改訂版への応援も期して、「益田さん駅データ」のWeb公開を開始するものです。
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